「あるプロダクトで〇〇ができる機能が欲しいのですが、技術的に可能ですか?」と問われた時にまず確認すること
2025/05/02

masyus
はじめに
私は1エンジニアとして働いている中で、所属する会社の他チームの方から
「あるプロダクトで〇〇ができる機能が欲しいのですが、技術的に可能ですか?」
という質問を受けることが過去幾度となくありました(今もあります)。該当する他チームは様々ですが、この質問を受けた時は(相手によるのですが)1エンジニアとして困惑することが多いです。何に困惑したのか、逆に何を確認すれば良さそうなのかについて今回は書きます。
「〇〇ができる機能が欲しい。技術的に可能か?」を問われた時に感じたこと
エンジニアとしてこの質問に回答する場合、予算や期間などの細かいことを度外視してYES or NOを言うことになりますが、同時に以下の3点を不安に思います。
- あなたが知りたいのは「技術的に可能か?」ではなく、「その◯◯ができるようになるために何が必要で、どれくらいの予算と期間を見込む必要があるのか?」ではないのか?
- Webサービス開発において、広義の意味で技術的に不可能であるものはほぼない。つまり「技術的に可能か?」を聞いてくること自体、さして意味がなさそうに感じる
- 万が一ここで私がNOと言った場合、あなたのアイデアはそこで潰えてしまうのか?
場合によっては
- その機能は運用上の課題解決にはなるかもしれないが、その先にいる顧客の根本的な課題解決にまで至っていないように見受けられる。本当にそれが欲しい機能なのか?
と質問し返すこともあります。
「技術的に可能か?」には複数のニュアンスが含まれている可能性がある
私の過去の経験によると、「技術的に可能か?」の質問のニュアンスは大きく分けて2つあると考えています。
1. 予算範囲内で実現可能であるかを知りたい
大半の方の当該質問の意図はこれに該当します。つまり、リソース込みで実現可能性があるのかを暗に知りたい場合です。これはおそらく問いかける相手を間違っており、1エンジニアが回答できる範疇を超えています。PdM(プロダクトマネージャー)に伺って返答していただけるかも若干怪しいですが、今回は話の前提がプロダクトへの機能追加検討であるため、まず最初の相談先としてはエンジニアではなくPdMになろうかと思います。
また、PdMに相談する段階で
- その機能は運用上の課題解決にはなるかもしれないが、その先にいる顧客の根本的な課題解決にまで至っていないように見受けられる。本当にそれが欲しい機能なのか?
の懸念がブラッシュアップされるのが望ましいと思います。その上で予算(と、もし本当に必要であれば技術的実現可能性)を見出すのが良さそうです。
余談ですが、「予算範囲内で実現可能であるかを知りたい」という経緯であったにも関わらず「技術的に可能か?」という質問を1エンジニアにするケースというのは
- 質問者自身が本当に知りたいことを正しく認知することができていない
- 質問者が社内の誰に何を相談すべきかが把握できていない
のどちらかが背景にあると考えています。1.は質問者に能力研鑽が必要なケースで、特に若い人が陥りやすいように感じます。2.は社内における各チームの役割が正しく認知されていない、もしくは日常の業務でエンジニアチームとの接点が遠いチームに属する方が質問者になるケースでよく見受けられます。
2. 本当に技術的に可能なのかを知りたい
本当に技術的に可能なのかを知りたいケースは主にPdMが、
- 顧客の課題を解決できる効果的な機能追加案を形にできたが、類似する機能を他社プロダクトでも見たことがないため、自社で駆使するテクノロジーで実現可能なのかを知りたい
場合にする可能性があると考えています。このようなケースであれば、その道のスペシャリストであるエンジニアとして真摯に回答したいところです。
プロダクト開発の中長期施策を検討する上で重要な要素になるため、その場である程度確からしい回答ができるのなら回答して良いと思いますが、そうでない場合は別途エンジニアチーム内で精査する時間を設けてから回答するほうが良さそうです(例えばテックリードに相当する方へ相談する等)。
予算範囲内で実現可能であるかを暗に知りたいケースで「技術的に可能か?」を質問された時にエンジニアが確認すること
いろいろ書きましたが、なんだかんだで今後も複数のニュアンスを持ちながら「技術的に可能か?」という質問を受けることは一定数生じうると思います。そのため、予算範囲内で実現可能であるかを暗に知りたいケースにおける質問者への提案集を作ってみました。
- 「技術的な実現可能性についてご質問いただいていますが、先に方法論を固定して話を進めるよりも、まずは具体的に『実現のために必要な要素や、想定される予算感・期間』についてプロダクトマネージャーと相談された方がよりエンドユーザーの抱える根本的な課題解決の議論ができるのではないかと思いましたが、いかがでしょうか?」
- 「申し訳ありませんが、技術的な見解をお答えする前に、このアイデアの本質的な価値について、もう少し掘り下げてお話しさせていただけますでしょうか?」
- 「ご提案いただいた機能について、運用面での改善は見込めると思います。ただ、エンドユーザーの抱える根本的な課題解決という観点で考えた時に、もう少し検討の余地があるように感じます。一度、プロダクトマネージャーの方と課題の本質について整理されてみてはいかがでしょうか?」
おそらくこのような提案ができれば、質問者がより適切な方と建設的な議論ができるのではないかと思います。私も今後似た状況の際に試してみたいと思います。